教育時事

大学入学共通テストについて【最新の動向】

 

今日は、センター試験に変わって今年から実施予定の「大学入学共通テスト」について説明していきたいと思います。

なんとなく新しい試験になることは知っていても、その内容や狙いについては知らないという方もいるのではないでしょうか。

また、当初の実施予定からの変更点も出てきました。

そこで、僕自身の記録の意味も含めて、現時点(2020年5月)で決まっていることを皆さんと共有したいと思います。

  •  高校3年生
  •  学校の先生方
  •  教員採用試験の受験生

ぜひ、本記事を参考にしていただければと思います。

では、お願いします。

 ◯とにかく今年度(2021年実施)の試験概要だけ知りたいという人へ

今年は、マーク式オンリーです。

記述問題はありません。導入見送りとなりました。)

→詳しくはこちらもご覧ください。(大学入試センターの公式サイトへ飛びます)

そもそもなぜセンター試験が廃止されたのか

 高校の授業変革が真の狙い

そもそもなぜセンター試験は廃止となったのでしょうか。

結論から言えば、

高校の授業改革を行うため

です。

これまで、センター試験に対しては、マーク形式での出題で本当に受験者の学力が測られるのかといった批判などが寄せられていました。

もちろん、そういった事項も理由の一つなのでしょうが、最大の理由は高校の授業を変えるためと考えられます。

 高校の授業の何を変えたいのか

では、この改革を推進している方々は高校の授業に対してどのような分析をしており、どこを変えたいのでしょうか。

一つは、「知識重視の授業スタイル」です。

現在大学生の皆さんは経験があるかもしれませんが、高校の授業はこのようなパターンではなかったでしょうか。

  •  英語、古文は予習で現代語訳してきたものを答え合わせ
  •  地歴はプリントの穴埋め
  •  理科はほとんど実験なし
  •  数学はひたすら問題集を解いていく

もちろん、すべての授業が上記のようであると言うつもりはありませんが、こういったスタイルの授業が多かったのではないでしょうか。

これが、「知識重視」ということです。

中央教育審議会においても、この問題点が指摘され、「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ(2016年8月26日)」で次のように述べられています。

 教育課程において、各教科等において何を教えるかという内容は重要ではあるが、前述のとおり、これまで以上に、その内容を学ぶことを通じて「何ができるようになるか」を意識した指導が求められている。

「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」p.13より引用

なぜ、知識重視を変えたいのか。

それは、高度情報化社会と化した現代において、自ら主体的に学び、考えて行動していけるように生徒を育てていきたいからです。

 今回の学習指導要領改訂も、高校の教育改革を一つの目的としています。共通テストの実施とともに連動した改革と考えられるでしょう。

 高校側のジレンマ

しかし、高校サイドも別に好きでこういう授業スタイルをとっているわけではありません。

では、なぜそうなってしまうのでしょうか。

その一つの理由が「センター試験」の存在です。

すごく簡単に言ってしまえば、高校としては生徒の進路実現のため、センター試験で点数を取れるように「知識を重視した授業」をせざるを得ないのです。

特に進学校ならなおさらです。

こういうわけで、センター試験が廃止となったわけです。

話がつながってきたでしょうか。

ここまでをまとめると次のようになります。

  1.  政府は、予測不可能な社会の中で、生徒たちが生きていけるように、生徒の「思考力・判断力・表現力」を育成したい。
  2.  しかし、現在の高校の学びは「何を知っているか(=知識)」に偏っている
  3.  それは、センター試験などの大学入試を突破するために仕方ない
  4.  それなら、その大学入試を生徒の「思考力・判断力・表現力」を問うスタイルに変えよう
  5.  「大学入試共通テスト」の実施へ

だいぶ乱暴なまとめになってしまいましたが、要点はここにあると思います。

センター試験から「大学入学共通テスト」へ

このような背景で「大学入試共通テスト」が導入されることになりました。

そのため、この「共通テスト」は、生徒の「思考力・判断力・表現力」を見るためのテストということになります。

したがって、「共通テスト」は次のような形をとることになっていました。

  •  国語・数学での記述回答の導入
  •  英語の外部試験の活用

国語、数学では記述式を混ぜることで、生徒の「思考力・判断力・表現力」をよりテストで反映できるようにし、英語は「読む・聞く」だけではなく「話す」「書く」を合わせた4技能を見るために外部試験を導入することを意図していました。

しかし、ーここが大事ですがー来年度の「共通テスト」では

上記のいずれも実施されません。

びっくりするかもしれませんが、本当の話です。

では、来年の「共通テスト」はどうなるのか。

先日、概要が発表されました。

こちらです↓

「令和 3 年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト出題教科・科目の出題方法等」

表を見てもらえばわかりますが、3教科では

 国語→80分、全問マーク、200点満点

数学Ⅰ・A→70分、全問マーク、100点満点

数学Ⅱ・B→60分、全問マーク、100点満点

英語(筆記)→80分、全問マーク、100点満点

リスニング→30分、全問マーク、100点満点

のようになっています。

マーカーを引いたところ以外は、これまでのセンター試験と全く同じ形式です。

記述問題については、あくまで「導入見送り」の状態なので、今後変更があるかもしれませんが、今年度の「共通テスト」はマーク式だけだと考えて大丈夫でしょう。

まとめ

導入見送りにはなってしまいましたが、高校の教育にメスが入ろうとしているというのは確実です。

2022年度からは高校でも新学習指導要領の実施が始まります。

賛成、反対派それぞれあると思いますが、まずは一連の改革が何を目指しているのかを知ることは大切です。

高校の先生を目指している人は、特に最新の動向にも注目しておきましょう。

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