古典文法講座

活用の種類、行を覚えておきたい「ひっかけ動詞」たち

今日で、動詞の活用は終わりです。ここまでお疲れ様でした。

今日は、動詞の判別の応用編を説明します。

大概の動詞は前回紹介した2ステップ

1)すぐ判別できる動詞かどうかをチェック

2)それ以外は「ず」をつける

で対処できますが、今回はそれでは対応できない例外ケースを紹介します。

無数に生まれては消えていき、また絶えず変化する言葉を完璧に捉えきる文法など存在しません。

よって文法を学ぶ上で例外はつきものです。

しょうがないと割り切って、例外パターンを覚えていきましょう。

では、始めます。

 

未然形が予想外

「ず」をつける方法とは、私たちの現代文法の感覚に依存しています。

つまり、「現代語でこのように言うのが一番自然だからこれで合っているだろう」ということです。

この感覚は十中八九正しいのですが、この感覚が通用しない動詞たちが一部存在します。

例えば、「恨む」という動詞は「ず」をつけるとどうなると思いますか?

「恨む」+「ず」=「恨まず」?

と思いますよね。

ではないんです・・

正しくは「恨みず」となり、未然形がイ段なので、マ行上二段活用となるのです。

これは覚えるしかありません。

幸い、こういった動詞はいくつかしかないので、今覚えてしまいましょう。

とりあえずは、今出た「恨む」→「恨みず」と、もう一つ、「飽く」→「飽かず」(普通に考えると「飽きず」になってしまう)を覚えてください。

「飽く」は「飽かず」と未然形がア段なので、カ行四段活用です。

ちなみにこの「飽く」の意味「満足する」は入試頻出です。また古文単語で出てきたら思い出してください。

行の特定が難しい

動詞を判別するときに活用の行を確認するというのは学びました。

先ほどの「恨む」だったら、未然形から「恨み、恨み、恨む、恨むる、恨むれ、恨みよ」と変化します。(恨みすぎ・・・)

よく見ると「み→む→むる」とマ行の中で変化していることが分かりますね。

だから、マ行上二段活用と判断できます。

しかし、この判定が困難な場合があります。今日も例題を使って確認しましょう。

 終止形は何だ?

例文:その男、いたく老いて・・・

問題:「老い」は何行何活用の動詞か答えなさい。

さあ、どうでしょうか。少し考えてみてください。

 

 

以下、解説です。

まず文中の「老い」の活用形を決めにいきましょう。「老いて」と「て」が続いているので、連用形であると分かります。

連用形が「い」になるのは、変格活用を除けば、上一段or上二段のどちらかです。

そして、上一段活用の覚え方は・・・?

そう、「ひいきにみゐる」でした。そこには「老」の「お」の文字はないので、上一段ではない。したがって、「老い」の活用の種類は上二段活用です。

 

さて、問題はここから。「老い」を上二段活用にしたがって活用させましょう。

老い、老い、老う・・・

と行きたいですよね。

しかし、終止形は「老う」ではありません。

もし「老う」だとするとア行の活用となるのですが、実は、古文でア行の活用になるのは非常に稀で、さしあたり「得(う)」と「心得(こころう)」という2語だけと思っておいて大丈夫です。

じゃあ、「老い」の終止形は一体何なのでしょうか?

ここで五十音の表を思い浮かべてください。ア行以外にも「い」が登場する行がありませんか?

そう。「ヤ行」と「ワ行」があります。しかし、古文でのワ行は「わゐうゑを」と書くので、「老い」の「い」はヤ行のそれだと決まります。

したがって、「老い、老い、老ゆ、老ゆる、老ゆれ、老いよ」と変化するのです。

答えは、ヤ行上二段活用

同様に、ヤ行の活用として覚えておきたいのが「射る」です。活用の種類は「ひいきにみゐる」の「い」にあるので上一段活用です。

 歴史的仮名遣いが判断の決め手

さて、最後にもう1パターン考えましょう。

「据う」(現代語の「据える」)という動詞は何行、何活用でしょうか?

一発で活用の種類が分かる動詞ではないので、まずは「ず」をつけます。

「据えず」だから、下二段活用。活用する行は・・ア段

あれ?先ほどア段は「得」「心得」だけって言ってなかったでしょうか。

では、ヤ行でしょうか。いや、ヤ行ならば終止形は「ゆ」のはずですが、動詞は「据う」です。

答えは、「ワ行」です。確かに未然形の音は「据え」ずなのですが、書くときは「据ゑ」となるのです。

このようにワ行とヤ行を区別するときには歴史的仮名遣いを見るのが有効です。

ワ行の動詞で他に覚えておきたいのは「居る」と「率る」。どちらも「ゐる」と読み、上一段活用です。

ア行とヤ行、ワ行を区別するポイントを整理しておきます。

◯ア行・ヤ行・ワ行を区別する方法

「得」「心得」→ア行

連用形「いorえ」、終止形「ゆ」→ヤ行

連用形「ゐorゑ」、終止形「う」→ワ行

まとめ

今日のまとめです。

・「ず」をつけて予想外の活用をするものがある・・「恨みず」、「飽かず」

・ア行の活用は「得」「心得」のみ

・ヤ行、ワ行は連用形、終止形から区別

今日は、少しややこしいところを学びましたが、これで動詞はクリアです。この「動詞」の時間を通して、言葉が続く語に応じて変化していくのを想像できるようになったと思います。

古文では文章中に埋まっている語を抜き出し、その終止形を特定するという作業が必要不可欠です。この作業に慣れる意味でも、「動詞」の課は大きな意義がありました。

次回からは用言のうち形容詞に入りたいと思います。

引き続きよろしくお願いします^^

 

次の授業、「形容詞」はこちら。

形容詞の活用【リズムが決め手】

 

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