ちょっと複雑なところだけど、できるだけ分かりやすく説明していくからよろしくね。
二方向の敬意
さて、次のケースはどう考えたらいいかな?
例によって、校長先生の例で考えてみよう。
・教頭先生が校長先生のところへ行く。
まさか、どっちもいっぺんに使うとか?
尊敬語と謙譲語をダブルで使うんだ。
例えば、こんな感じだね。
・中納言(が中宮定子のもとに)参りたまひて、
このように動作の主体と客体、両方に敬語を使わなければならないシーンが古文ではよく出てくるんだ。
これを「二方向の敬意」と呼ぶよ。
◯二方面の敬意
動作をする人、受ける人どちらにも敬語が必要な場合
→尊敬語、謙譲語を両方重ねて使う
尊敬語、謙譲語に敬意の差はなし
尊敬語→かなり偉い人、謙譲語→ふつうの偉い人、みたいに。
謙譲語の対象として、帝(=天皇)がくることも普通にあるからね。
「尊敬語=動作の主語へ、謙譲語=動作の受け手へ」という定義で覚えておこう。
練習問題
◯次の下線部の敬語について、1)敬語の種類と、2)誰から誰への敬意かを答えなさい。
1、女御・更衣(帝に)あまたさぶらひたまひける中に、
2、亭子(ていじ)の帝の御供に、太政大臣、大堰(おおゐ)に仕うまつり給へるに、
まず本動詞、補助動詞どっちだろう?
本動詞で「さぶらふ」を使うときには、丁寧語になるケースと謙譲語になるケースがあったね。
「たまふ」はおなじみの尊敬語・補助動詞だね。
次に敬意の方向を考えてみよう。
ということは、お仕えされるほうだから、帝への敬意かな。
すると「たまふ」は?
2方向の敬意だから、謙譲語の時と尊敬語の時で対象が違っているはずだね。
その調子で2もやってしまおう。
「仕うまつる」は「お仕えする」という意味の謙譲語だよ。
そして、そのあとの「給ふ」は、帝じゃない方で、太政大臣への敬意となるわけね。
敬語、わかってきたんじゃない?
2方向の敬意も基本は、前回までに習った敬語と同じだから、落ち着いて考えれば必ずできるよ。
◯答え
1、さぶらふ→謙譲語・本動詞/作者から帝への敬意
たまひ→尊敬語・本動詞/作者から女御・更衣への敬意
2、仕うまつる→謙譲語・本動詞/作者から亭子の帝への敬意
給ふ→尊敬語・補助動詞/作者から太政大臣への敬意
まとめ
・動作をする人、される人どちらも身分の高い人というケースも存在する
・その場合、尊敬語と謙譲語を連続して使う。これを二方向の敬意という。
・それぞれの敬語の答え方は、前回の方法でOK
次はこちら→【絶対敬語と二重尊敬】最高身分への敬意表現を紹介!