古典文法講座

【誰から誰へ?】敬意の方向を解説します

浪越考
浪越考
これまで本動詞、補助動詞の区別と尊敬語、謙譲語、丁寧語の区別を勉強したね。

敬語の基本と本動詞と補助動詞を紹介

【尊敬・謙譲・丁寧】敬語の種類を紹介します!

今日は敬語問題を答えるときに大切な最後の1ピースを紹介するよ。

在川葵
在川葵
最後ってことは、これで敬語はクリア?
浪越考
浪越考
完全クリアとは言えないけど、今日までの範囲が頭に入っていれば、敬語は7〜8割OKだと思っていいかな。

さあ、じゃ今日もがんばっていこう!

在川葵
在川葵
はい!

敬意の方向

今日学ぶのは、「敬意の方向」という考え方だよ。

在川葵
在川葵
敬意の方向?
浪越考
浪越考
前回、尊敬語や謙譲語、丁寧語を紹介したときに、誰に対する敬意を表しているかで区別したよね。
在川葵
在川葵
うん、確か

・尊敬語→動作の主語への敬意

・謙譲語→動作の受け手への敬意

・丁寧語→聞き手、読み手への敬意

だったよね。

浪越考
浪越考
そうそう。

古典文法では、「誰に対する敬意か?」だけでなく、「誰からの敬意か?」つまり「敬意を使っている人が誰なのか?」も合わせて考えなければならない。

この「誰から誰への敬意か?」というのを「敬意の方向」と言うんだ。

浪越考
浪越考
例えば、先生が生徒に向かって、「教科書の54ページを開いてください〜」と言うとき、

その「ください」は先生から生徒への敬意になる、という感じだね。

在川葵
在川葵
尊敬語や謙譲語のところで、誰への敬意かは学んだから、あとは誰からの敬意かを勉強すればいいってことね。
浪越考
浪越考
そう、古文の敬語って難しいと思われがちだけど、こうやって分けて考えてみるとけっこう簡単だね。

敬意の出所も2パターンしかないから、今日でバッチリ理解してしまおう!

在川葵
在川葵
うん!

古典文法では、その敬語が「誰から誰への敬意か」を答えなければならない

地の文=作者からの敬意

浪越考
浪越考
誰からの敬意かを見分けるポイントはたった一つだけ

「地の文か会話文か」だよ。

在川葵
在川葵
地の文?
浪越考
浪越考
小説って、登場人物が話している「」の箇所と、「」のないナレーターの箇所があるよね。
在川葵
在川葵
うん
浪越考
浪越考
地の文というのは、そのナレーターの箇所のことを言うんだ。

地の文で敬語が使われている場合、その敬意は文章を書いている人から出ていると考えるんだね。

在川葵
在川葵
文章を書いている人が、登場人物に対して敬意を込めているってこと?
浪越考
浪越考
そう言うこと。

例えば、在川さんが校長先生が登場人物として出てくる小説を書いているとしよう。

在川葵
在川葵
うん。(絶対書かないけどね。)
浪越考
浪越考
そして、卒業式で、校長先生がお話しするシーンを描写するとしよう。

そのときに「校長が壇上に上がった。」でもいいけど、敬意を込めようと思ったら「校長先生が壇上に上がられた」って書くんじゃないかな。

在川葵
在川葵
まあ、確かに(書かないけど)
浪越考
浪越考
当然、筆者もその時代に生きていた人だから、身分の高い人が登場人物で出てくるときは、敬語を用いることで敬意を表現したんだ。
在川葵
在川葵
なるほど。

◯地の文(ナレーター、「」じゃないところ)で敬語が用いられる

作者から登場人物への敬意

「 」の中=話している人からの敬意

在川葵
在川葵
じゃあ「」の中は誰からの敬意なの?
浪越考
浪越考
これもさっきの小説に出てくる校長先生の例で考えてみよう。

例えば、他の登場人物であるA先生が、卒業式の司会で「校長先生が壇上に上がられます。」と言うシーンがあるとしようか。

この「」の中も当然、作者である在川さんが書いたんだけれど、「」の発言はA先生のものだよね。

在川葵
在川葵
うん
浪越考
浪越考
だから「」の中で敬語が使われる場合、その敬語は話している人が敬語を使っていることになるんだ。

つまり、「」中では、敬意の出所は「話し手」になるということだね。

在川葵
在川葵
ということは、

その「校長先生が壇上に上がられます。」の敬語は、A先生から校長先生に向けられた敬意ってこと?

浪越考
浪越考
その通り。

ここから大切なことが見えてくるよ。

「」中の敬語が誰から誰への敬意かを答えるためには、その「」は誰が話した言葉なのかをしっかり読み取っていなければならない、ということなんだ。

敬語と文章の読解は切っても切れない関係にあるということだね。

在川葵
在川葵
なるほど。

◯「」の中で敬語が用いられる

→話し手(登場人物)から別の登場人物への敬意

練習問題

浪越考
浪越考
説明はこれくらいにして、実際に練習してみようか。

前回と同じ文章を使って「誰からの敬意なのか」を考えてみよう。

◯次の下線部の敬語は誰から誰への敬意を表しているか答えよ。

1、聖、喜びて、日頃のおぼつかなさなどのたまふ

2、(男が言った、)「嫗ども・・寺に尊き業(わざ)すなる、見せたてまつらむ。」

浪越考
浪越考
1は「」じゃない地の文で敬語が使われているね。だから即「作者からの敬意」で決まりだ。
在川葵
在川葵
作者からの敬意の場合は、けっこう見分けるのが簡単かも!
浪越考
浪越考
一方、2は「」の中で敬語が使われているね。だから「」の内容を話している人、ここでは「男」が敬意の出所になるよ。

今回は練習問題だから(「男が」)と主語を補っているけど、文章中に書かれていないことも時々あるから、文脈から誰の発言かを推測しないといけない

在川葵
在川葵
なるほど、こっちはちょっと難しそう・・
浪越考
浪越考
はじめはちょっとややこしく感じるかもしれないけど、そのうち慣れてくるから大丈夫!

「地の文→作者からの敬意」は、今からでもすぐに使える知識だからしっかり覚えておこう。

◯答え

1、作者から聖への敬意

2、男から嫗への敬意

まとめ

・文法問題では、「誰から誰への敬意か」という敬意の方向が問われる

地の文(「」ではない文)で使われる敬語は、作者から登場人物に対して敬意を表している

「」の中で使われる敬語は、「」を話している人(登場人物)から別の登場人物へ敬意を表している

浪越考
浪越考
さて、これで敬語の基本知識はバッチリだね。

次回は、これまで学んだことを使って、敬語の応用編に挑戦しよう。

ここが理解できれば敬語はもう怖くないよ。

在川葵
在川葵
応用編、理解できるかな・・
浪越考
浪越考
できる限り分かりやすく説明していくから、大丈夫だよ!

次回も、よろしくね。

在川葵
在川葵
はい、お願いします!

次はこちら→【敬語の応用編】2方向の敬意とは?講義形式で分かりやすく説明!

 

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