古典文法講座

助動詞完全攻略!まずは全体像をつかもう【古典文法】

古典文法において、最重要項目の一つである助動詞。

今日から、古典文法講座は第2章「助動詞」に突入していきます。

「助動詞っていっぱいあって覚えられない・・」

「識別がややこしい・・」

など、助動詞に対して苦手意識を持っている人も多いと思います。

今日からのシリーズ記事では、助動詞をじっくりと扱っていきます。

これまで、助動詞がよく分からなかった人でもバッチリ理解できるように説明していくので、ぜひ読んでみてください^^

助動詞って何?

助動詞とは、簡単に言えば「動詞の意味を助ける」言葉のグループ(品詞)です。

英語で言えば、can, should, may, must などがこれに当たります。

例えば、canは動詞と一緒に使うことで「〜できる」という「可能」の意味を追加できます。

このように、助動詞は主に動詞と一緒に用いて、いろいろな意味を追加していきます

助動詞が表現の可能性を一気に上げる

「助動詞、助動詞っていうけど、そんなに大事なの?」と思ったことはないでしょうか。

確かに、一見すると「き、けり、つ、ぬ・・」といった単語が読解に大きな影響を与えるようには思えないでしょう。

それよりも名詞や動詞、形容詞などをバンバン覚えていった方がいいんじゃないのか、とさえ思うかもしれません。

しかし、助動詞の存在は文の表現の幅をグーンと広げてくれます。

これは体感してもらった方が早いでしょう。

次の文章を読んでみてください。

ここは試験会場。まわりには、たくさんの受験生。入試当日、今日まで必死に勉強してきた。僕ほど勉強した生徒は他にはいないだろう。いや、いないに違いない。

周りの生徒たちの声が聞こえる。「絶対大丈夫。だって、先生にあれだけ勉強させられたんだもん。」

先生か・・

先生は今頃、職員室で僕の健闘を祈ってくれていることだろう。お世話になった先生。先生と出会った日がまるで昨日のことのようだ。懐かしいなあ。

「応援してくれたみんなのためにも絶対、合格しよう!」

ーーー試験がはじまった。

「(あれ、なんだこれ。めちゃくちゃ難しいぞ・・)」

練習で何度もやったはずの問題もできない。時間は刻々とすぎていく。

「(ああ、やばいぞ・・)」

遠くてアラームの音が聞こえている。

「はっ。夢か・・」目が覚めた僕は深呼吸をした。これが本番だったら、と思うと恐ろしくて仕方がないのであった。

なかなかきつい文章ですね・・

この文章、実はあちこちに助動詞が用いられています。どこだか分かりますか?

ここは試験会場。まわりには、たくさんの受験生。入試当日、今日まで必死に勉強してきた(過去)。僕ほど勉強した生徒は他にはいないだろう(打消推量)。いや、いないに違いない(打消意志)

周りの生徒たちの声が聞こえる。「絶対大丈夫。だって、先生にあれだけ勉強させ(使役)られ(受け身)たんだもん。」

先生か・・

先生は今頃、職員室で僕の健闘を祈ってくれていることだろう(現在推量)。お世話になった先生。先生とであった日がまるで昨日のことのようだ(比況)。懐かしいなあ(詠嘆)

「応援してくれたみんなのためにも絶対、合格しよう(意志)!」

ー試験がはじまった。

「(あれ、なんだこれ。めちゃくちゃ難しいぞ・・)」練習で何度もやったはずの問題もできない(不可能)。時間は刻々とすぎていく。

「(ああ、やばいぞ・・)」

遠くてアラームの音が聞こえている(存続)

「はっ。夢か・・」目が覚めた僕は深呼吸をした。これが本番だったら(反実仮想)、と思うと恐ろしくて仕方がないのであっ(断定)た。

※「過去」とかは何度も出てきていますが、ごちゃごちゃするので初登場のところだけ示してあります。

太字で示したところは全て、古典文法の助動詞がカバーする範囲です。

古文の助動詞は、時間、態(能動、受動)、否定、仮定、など本当に幅広いニュアンスを足すことができるのです。

ゆえに、もし助動詞がまったくなかったら、上の文章は次のようになってしまいます。

<助動詞なしバージョン>

ここは試験会場。まわりには、たくさんの受験生。入試当日、今日まで必死に勉強する。僕ほど勉強した生徒はいる。いや、いる

周りの生徒たちの声が聞こえる。「絶対大丈夫。だって、先生にあれだけ勉強するんだもん。」

先生か・・

先生は今、職員室で僕の健闘を祈る。お世話になった先生。先生と出会った日が昨日のことだ懐かしい

「応援してくれたみんなのためにも絶対、合格する。」

・・・

もう、ここらへんでやめますが、本当に味気ないですよね。

それどころか、否定も使えないので、全く意味が反対になってしまっています。

もうお分かりだと思います。

助動詞を知らないということは、今見たような文章を読まなければならないようなものなのです。

助動詞の知識は、特に古文においては、文章の読解において必要不可欠です。

助動詞で覚えなければならない4つのポイント

では、助動詞をしっかり覚えると言っても、何を覚えればいいのでしょうか。

ポイントは4つです。

 1、助動詞の種類

当然ながら、何が助動詞なのかを知っておかなければなりません。

「き、けり、つ、ぬ、たり、り」、「る、らる、す、さす、しむ」などなど。繰り返し覚えていきましょう。

覚えるべき助動詞の総数は25〜30種類です。クラスメイトの名前を覚えていく感じでがんばっていきましょう。

 2、文法的意味

次に大事なのは、その助動詞がどんな意味を表すのか、ということです。

例えば、「き」なら「過去」、「む」なら「推量」といった具合です。

この「過去」や「推量」というのを助動詞の「文法的意味」といいます。

一つの助動詞が複数の文法的意味を持っているケースも多いので、どの意味として使われているのかを適宜判断する必要もあります。

 3、接続

動詞のところで、「動詞の活用の種類を判別する方法」というのをやったんですが、覚えていますか?

【古典文法】動詞の活用の種類を識別するための簡単2ステップ

あの時、「ず」をつけてどう変化するかで見分ける、というのを教えましたね。

なぜ「ず」をつけたのかというと、動詞を未然形にしたかったからです。

未然形とは、そのあとに「ず(〜ない)」が続く活用の形であると以前説明しましたが、これは言い方を変えれば、「ず」の上はいつでも未然形になる、ということを表しています。

このように、助動詞は上に来る語の活用形が決まっていますこれを「接続」といいます。

※「ず」とは、「打消」の意味を持つ助動詞です。

だから、助動詞によって、上がいつも未然形になるもの(未然形接続)や、連用形のあとにしか使えないもの(連用形接続)などが存在します。

それを覚えていかなければなりません。おそらくここが助動詞学習で苦戦するところになるでしょう。

 4、活用

活用とは、「つづく言葉によって、語(語尾)が変化すること」でした。

動詞や形容詞、形容動詞でさんざんやった活用ですが、実は助動詞も活用します。

文中で出てくる助動詞をそれだと見つけるためには、それぞれの助動詞がどんな風に活用するのかを知っておく必要があります。

しかし、全くゼロから活用の仕方を覚えないといけない助動詞はいくつかで、ほとんどの助動詞は、これまでに習った活用の種類(動詞のラ変、形容詞など)と同じです。ゆえに、活用についてはそんなに大変ではないでしょう。

 種類ー意味ー接続をセットで覚える

助動詞を覚えていくときには、種類ー意味ー接続をセットで覚えましょう。

例えば

・きー過去ー連用形

・ましー反実仮想ー未然形

という感じです。

この3つで1セットが瞬時に出てくるようになれば、助動詞はOKです。

はじめのうちは文法書をそばに置いて、すぐに調べる

もちろん、いきなり全て覚えられるわけもないので、文法書をそばに置きながら、分からない場合はさっと調べるようにしましょう。

たいていの文法書は、本の表紙のウラに助動詞活用表が載っています。

見にくいかもしれませんが、これを使って調べていきます。

何度も調べていくうちに慣れていきますし、それこそ活用表自体が頭に入っていきます。

面倒くさがらずにどんどん表を使っていきましょう。

まとめ

今日のまとめです。

  •  助動詞は広範な意味を持ち、古文読解に必要不可欠
  •  種類、文法的意味、接続をセットで覚える
  •  文法書表紙ウラの活用表を使い倒して表を丸ごと覚えよう

これが助動詞学習の全体像です。

次回から、個別の助動詞に入っていきますが、まずは種類、意味、接続のセットを覚えましょう。

覚えやすくするための豆知識も随所で紹介していきます。

古文学習の山、助動詞を一緒に乗り切っていきましょう!

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