前回で係助詞が終わり、助詞編もいよいよ後半戦。
今日は「副助詞」という助詞の種類を紹介します。
”副”という字でも分かるように、副詞のように使うことのできる助詞です。
今日は、副助詞の中でも入試頻出の「だに」「すら」「さへ」という3つの副助詞を紹介していきます!
<今日、登場する副助詞>
- だに
- すら
- さへ
- し、しも
だに
訳し方:1)せめて〜だけでも、2)〜さえ
主に1の意味を覚えておきましょう。
例文で確認します。
さらば、御ともには率て行かじ。もとの御かたちとなり給ひね。それを見てだに帰りなむ。
訳:それならば、一緒には連れて行くまい。もとのお姿になりなされ。せめてその姿だけでも見て帰りましょう。
これは「竹取物語」の一文です。
帝は、かぐや姫を宮中に連れて行こうとするけれど、かぐや姫は影になって姿を消してしまいます。その状況を受けて、帝が「連れて行けないのはわかった。じゃあせめて、その美しい姿だけもう一度見て帰らせてくれ。」とお願いするのが、例文のシーンです。
この「じゃあせめてこれだけは〜」という最小限の限定を表すのが「だに」です。
「せめて〜だけでも」と訳してみてうまくいかない場合は、二番目の「〜さえ」の訳が使えないかを考えてみましょう。
すら
訳し方:〜さえ
こちらも「だに」同様「〜さえ」と訳します。
普通に「〜すら」と訳してしまいそうになるので、要注意です。
厳密には、「だに」の方は程度の軽いものを前に出しておいて、それよりも程度の重いものを「〜さえ」と言うのに対し、「すら」は普通に他のものを類推します。要は、「すら」の方が幅広く使えるということですね。
ただ、そこまでしっかりと理解していなくても大丈夫です。
前の文からの類推、という使い方を覚えていればOKです。
さへ
訳し方:〜までも
「さえ」は「添加」つまり、付け加える意味を表す助詞です。
「だに」「すら」は「〜さえ」と訳すのに、「さへ」はそう訳しません。何だかややこしいので、試験で狙われることが多いです。
しかし、それを逆手にとって、
・「さへ」は「〜さえ」と訳さず
・それ以外(「だに」「すら」)は「〜さえ」と訳す
と覚えてしまえば、むしろ覚えやすかったりします。
例えば、
雨さへふりぬ。
訳:雨までも降ってきた。
という感じで使います。
「雨までも」ときているのですから、その前の文では天気のことだったり、沈んだ気持ちだったり、マイナスの出来事だったりと雨に関係することが書かれているはずだと想定できます。
単に「さへ=〜までも」と覚えるのではなく、前の文にさらに付け加えて行くイメージをもって「さへ」を理解できるようにしましょう。
3つとも文脈でとらえることが大事
「だに」「すら」「さへ」と3つを紹介してきましたが、共通しているのは、”前の文を受けて”表現されている点です。
副助詞に限らず古文全体において言えることですが、このように「文同士のつながり=文脈」を意識しながら文章を読み進めて行くのはとても大切です。
前回から、助詞の「強調」という面にスポットをあてて説明していますが、この強調も文の流れの中で行われます。
文自体の構造を決めたり、接続関係を示したり、助詞には重要な役割がたくさんありますね。
その他の副助詞
その他にも、副助詞はありますが、ひとつだけ紹介しておきます。
し、しも
訳し方:訳す必要なし
この「し」と「しも」はけっこうよく登場します。
文中に「し、しも」が出てきたら、それは強意の役割なので特に訳す必要なしです。出てきたら本文に線を引いて消しておきましょう。
例文
ひとりありかん身は心すべきことにこそと思ひけるころしも、ある所にて夜更くるまで連歌して、
訳:一人身で歩くようなときは用心すべきであると思っていた頃、ある所で夜が更けるまで連歌をして、
(※強調の意味なので、訳には反映されない。)
まとめ
今日のまとめです。
・副助詞「だに」は「せめて〜だけでも」、「すら」は「〜さえ」と訳す。
・そして「さへ」は「〜までも」と訳し、「〜さえ」とそのまま訳さない
・「し、しも」は強調なので、現代語訳はしなくてOK
今日は、割とあっさり片付きました。
副助詞の「だに」「すら」「さへ」は文解釈問題や、記述式の現代語訳問題などでたびたび登場します。しっかり押さえておきましょう!
さて、いよいよ助詞編も次回で終了です。
次回は、終助詞を扱う予定です。ぜひ見に来てください^^
次はこちら→「ばや」「にしがな」「なむ」・・終助詞を解説!【助詞編(終)】
◯助詞編のはじめはこちら
→【新章突入!】古典文法の助詞をシリーズで徹底解説していきます
◯助動詞編のはじめはこちら
◯用言編のはじめはこちら
→動詞の活用をわかりやすく説明【古典文法の復習はここからスタート】