古典文法講座

断定の助動詞「なり」「たり」を特集【形容動詞との見分けがカギ】

さて、前回は完了の助動詞の「たり」と「り」を学びました。

完了の助動詞後半戦「たり」「り」の意味、接続をチェック!

その中で「たり」には形の全く同じ形容動詞のケースと断定の助動詞のケースがあるから注意だ、という話をしたと思います。

今日は、そのワンケース、断定の助動詞について解説をしていきたいと思います。

断定の助動詞もよく出てくる助動詞の一つです。しっかり覚えていきましょう!

「たり」:助動詞には「たり」が二つある

題の通り、助動詞の「たり」は二つあります。

一つは、前回学んだ完了の「たり」で、もう一つが今回学ぶ断定の「たり」です。

<断定の助動詞「たり」>

◯文法的意味:断定「〜である」

◯接続:体言

◯活用:形容動詞型

「たり」についてはさっと終わらせてしまいましょう。

ほとんどの助動詞が動詞や助動詞のあとにくっついて働くのに対して、断定の「たり」は体言、すなわち名詞のあとに置いて使います。

「王たる存在」のような感じで使われます。(訳は「王である存在」)

 形容動詞とどうやって見分ける?

完了の助動詞「たり」との区別は上が連用形か体言かで見分ければいいので、簡単でしたが、形容動詞との判別はどちらも名詞にくっついて見えるので大変です。

とはいえ、覚え方はあります。

「いと(=とても)」を付けてみて自然に通じるなら形容動詞、そうでないなら断定の助動詞です。

ちょっとやってみましょうか?

次のうち、どちらが形容動詞で、どちらが断定の助動詞でしょうか。

1、朦朧(もうろう)たるけしき

2、人たる理由

「とても」を付けてみると、

・とても朦朧たるけしき

・とても人たる理由

2の方は明らかにおかしいですから、2が断定の助動詞です。1はとても朦朧としているという意味ですから、意味が通じます。

読んでみて違和感を感じるのは、「とても」が古語ではないからだと思います。「いと」をつけて「いと朦朧たる」とやってあげれば、ああ自然だ、となりますね。

とはいっても、これを自然に感じるまでには慣れが必要かもしれません。一番確実なのは、現代語の意味で通じるかどうかを考えてみることです。

「なり」:最重要助動詞のひとつ

 

<断定の助動詞「なり」>

◯文法的意味

・断定「〜である」

・存在・所在「〜にある、〜にいる」

◯接続

・体言、連体形接続

◯活用

・形容動詞型

「たり」よりも圧倒的に登場頻度が高いです。なので、時々断定の助動詞が「なり」しかないように錯覚してしまうこともあったりしますね。

意味は、「断定」に加えて「存在・所在」というものがあります。「〜にある・〜にいる」などの訳を充てるのが一般的です。

教科書によく載せられている「これも仁和寺の法師(徒然草)」というお話しで、「京なる医師」という表現が出てきますが、これがまさに所在の意味で用いられています。

なる医師→都にいる医師

出てくる頻度としては、ほとんどが断定なのですが、忘れた頃に所在・存在も出てきます。確実におさえておきましょう。

 断定するナリ〜!

ところでみなさん、僕が前回の授業の最後に出した宿題を覚えていますか?

「キテレツ大百科」を見てきてくださいと言ってましたね。

キテレツ大百科に出てくるコロ助というキャラクターがいるのですが、彼?は語尾に「〜なり」と付けてしゃべります。

はい。もう分かりましたね。コロ助の「〜なり」が断定の「なり」です。

断定は「〜である」と訳します。実際に、コロ助のセリフの「なり」を「〜である」に直してみて下さい。きっと意味が通っているはずです。

 形容動詞ナリ活用との判別

断定の助動詞「たり」が形容動詞タリ活用と紛らわしかったように、「なり」は形容動詞のナリ活用と判断しにくいです。

見分けるときは、「たり」の時と同様、「いと(=とても)」をつけて自然に意味が通るなら形容動詞、そうでないなら断定の助動詞です。

実は、「なり」が出てくるパターンは、断定助動詞、形容動詞以外にもあって、「なり」は古典文法の識別の中でも最重要項目の一つです。したがって、今後特集を組んで扱いたいと思います。とりあえずは形容動詞ナリ活用との区別がつくようにしておきましょう。

 「に」の形に注意!

「なり」の活用表を見てください。連用形のところに「に」がありますね。この「に」が断定の「なり」では非常に大事です!(この「に」もいろいろな可能性があって、正体を特定するのが難しい・・)

見分けるポイントとしては、「に」の部分を「〜である」に直して通じるかどうかを調べます。通じるなら断定の助動詞「なり」の連用形です。

しかし、「に」が断定の助動詞である典型的なパターンが存在しますので、それは暗記しておきたいところです。

<「に」が断定の助動詞となる典型パターン>

・にやあらむ

・にかあらむ

・にこそあらめ

細かく分けると

に/や/あら/む

のように4つの単語に分けることができて、

に→断定の助動詞「なり」の連用形

や→係助詞(疑問・反語の意味を表す)

あら→ラ変動詞「あり」の未然形

む→推量の助動詞「む」の連体形

から成り立っています。他の2つについても

に+係助詞+あり+推量助動詞

という構造は一緒です。

「にや」とか「にか」、「にこそ」と来たら、即、断定の「なり」だと考えて問題ありません。

 

では、「にけり」「にき」と来たら何でしたっけ?

そうです、完了の助動詞「ぬ」ですね。

こうやって、反射的に答えられるトレーニングをしていきましょう。

→参考:完了の助動詞「つ」「ぬ」を解説!【古典文法】

また、「あらむ」や「あらめ」は省略されることがよくあります。

だから本文では、「〜にや。」と終わっている場合がありますが、その時は「あらむ」を補って訳していかなければなりません。

まとめ

今日のまとめです。

・断定(〜である)を表す助動詞「なり」「たり」

・形容動詞との見分け方は「いと」をつけて通じるなら形容動詞

・「にやあらむ」「にかあらむ」などの「に」は「断定」で決まり

助動詞は文章の中で発見して覚えていく、というパターンが王道です。

こうして一個ずつ勉強して、知識としては入ったとしても、実際に見つけることができなければ意味がないからです。

一番の練習は学校の予習です。教科書の文章のどこに助動詞が使われているかを、(もちろん文法書を見ていいので)きちんと考え、ノートに書き込んでから授業に臨みましょう。

この繰り返しが、助動詞を見抜くセンスを培います。

がんばっていきましょう^^

次回はこちらから→尊敬の助動詞「る」「らる」を説明!【意味の判別法も紹介】

 

・助動詞編の最初はこちら→助動詞完全攻略!まずは全体像をつかもう【古典文法】

・用言編の最初はこちら→動詞の活用をわかりやすく説明【古典文法の復習はここからスタート】

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