さあ、今日から個別に助動詞を覚えていきましょう。
※前の授業はこちら。
今日は、「き」と「けり」という2つの助動詞を扱います。
この2つの助動詞の持つ文法的意味は「過去」。
これをマスターすることで、現在だけではなく、過去の出来事を表現できるようになるので、一気に理解できる文章が増えます。
では、がんばっていきましょう!
「き」:活用の仕方がイレギュラー
まずは、「き」から見ていきましょう。
活用
表を見てわかるように、こんな活用のパターンはこれまでに習っていません。したがって、新たに覚えなければなりません。
「せ、◯、き、し、しか、◯」と何度も口にして覚えていきます。(これはリズム感もいいので、けっこうすんなりと覚えられると思います。)
意味
「き」の意味は「過去」。訳す時は「〜した」です。
接続
連用形に接続します。「接続」についてはもう大丈夫でしょうか?助動詞によって上にどんな活用形が来るかが決まっていたのでしたね。
この後やる「けり」も連用形接続です。
つまり、「過去」=連用形接続です。
これをしっかりと覚えておきましょう。
「き」は文中で見つけにくい
過去の助動詞「き」は、非常によく登場する助動詞です。しかし、「せ」や「し」など終止形の「き」からは想像できない形に変化してしまっているので、いるのに見つけてもらいにくい、かわいそうな助動詞になりがちです。
また、終止形「き」、連体形「し」は、形容詞と混同してしまうことがあります。
形容詞のク活用、覚えていますか?
「く、く、し、き、けれ、◯。 から、かり、◯、かる、◯、かれ」でした。形容詞の語尾にも「し」と「き」があるためややこしいのです。
「き」の注意点は見つけにくいこと!
はじめは間違えても仕方ないので、文法ドリルなどで練習あるのみです。
「けり」:感受性豊かな助動詞
活用
「けり」の活用表ですが、何かに似てませんか?
そう、これは「動詞のラ変」と同じ変化です。だから、実質覚える必要はありません。
意味
「けり」の文法的意味は2つあります。
1、過去「〜した」
2、詠嘆(えいたん)「〜なあ」
1については「き」と同じです。2は「けり」にしかない用法です。
詠嘆というなじみ薄い言葉ですが、要は英語の感嘆文です。「なんと〜なんだ」とか「ああ〜だなあ」という感動が言葉となって表れたものです。
なので、和歌で出てくる「けり」は詠嘆の意味になることが多いです。
そして、意味上は詠嘆のくくりに入るのですが、「けり」は「これまで気付いていなかったことに気付いて感動する」というニュアンスを含んでいます。
このように用いられる「けり」を特に「気づきの「けり」」と言われます。異名みたいでかっこいいですね。ただし、もう一度いいますが、意味上はあくまで詠嘆です。
接続
これは先ほども説明したように連用形接続です。
過去=連用形接続!
また、「けり」も「き」ほどではありませんが、形容詞と見分けが難しいことがあります。
形容詞の已然形「けれ」と形が同じだからです。なので、問題で「けり」だけに傍線が引かれていたとしても、その上を見て、形容詞の語尾ではないかを確認することが大切です。
「き」と「けり」の違いってなんだ?
「き」と「けり」ってどちらも過去の助動詞ですが、ニュアンスの違いはあるのでしょうか。
き:くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ (比べ合ってきた髪も肩を越す長さとなってしまった。)
けり:今は昔、竹取の翁といふものありけり。(今となってはもう昔のこと、竹取の翁という者がいたそうな。)
一例を出してみました。分かりますか?
一般的に「き」は作者の直接体験した過去、「けり」は誰かから伝え聞いた過去を表すとされています。なので、物語や伝記などは「けり」の形をとることが多いです。
とはいえ、「これ、直接体験なのに「けり」使ってるじゃん!」というケースもけっこうあります。そこまで厳密に区別ができるわけではないので、あまり気にしなくても大丈夫です。
まとめ
今日のまとめです。
・「き」は「けり」はどちらも連用形接続
・「けり」には詠嘆の意味がある
・形容詞と勘違いしやすいので注意
助動詞一発目、無事理解できましたか?
使える助動詞が増えれば増えるほど、言葉で表現できる世界が広がっていきます。
今日は、過去に行けるようになりました。
これから、少しずつ覚えていきましょう!
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