古典文法講座

願望の助動詞「まほし」「たし」を紹介【+助動詞小ネタ付】

今日から助動詞編も11講目。そろそろゴールが見えて来ました。

前回は→【古文版の仮定法】反実仮想の助動詞「まし」を紹介

今日やるのは、願望の助動詞と呼ばれる「まほし」と「たし」の2つです。

正直なところ、今日は特に難しいところはありません。

とにかく覚えていただくだけです。

はじめの頃に言っていた「助動詞ー意味ー接続の3つをセットにして覚える」という助動詞の鉄則を思い出して続きを読み進めてください^^

「まほし」の基本情報

<願望の助動詞「まほし」>

◯文法的意味

願望(〜したい)

◯接続

未然形

◯活用

形容詞型

意味は「願望」だけで、「〜したい」と訳します。これまで複数の文法的意味を持つ助動詞ばかりを相手にして来たので、ちょっと拍子抜けでしょうか。

覚え方もけっこう簡単です。

願望→〜がほしい→まほし

という風に、「欲しい」と「まほし」を関連づけて覚えておけば忘れることはないでしょう。

形容詞「あらまほし」

実は、形容詞に「あらまほし」という語があります。

徒然草のこの一文が有名ですね。

家居のつきづきしく、あらまほしきこそ、仮の宿りとは思へど、興あるものなれ。

これは「まほし」の派生系のようなものです。

あり(未然形)+まほし=あらまほし

となっていて、意味も「欲しい状態で存在している」→「理想的な(これが「あらまほし」の意味)」と成り立ちから想像可能です。

成り立ちは願望の助動詞がくっついているのですが、試験などで答える場合は「あらまほし」でひとカタマリ。形容詞シク活用です。ご注意ください。

「たし」の基本情報

<願望の助動詞「たし」>

◯文法的意味

願望(〜したい)

◯接続

連用形

◯活用

形容詞型

こちらは連用形接続なので注意が必要です。

意味は「まほし」と同じ願望のみです。こちらは「〜したい」→「〜したし」→「たし」と覚えていくといいと思います。

「まほし」「たし」については、他に特筆すべき点もないので、こんな感じなのですが、これで終わったのではちょっとあっけないですね・・

というわけで、最後に助動詞の小ネタ的なものを紹介したいと思います。

古典文法の豆知識〜助動詞が連続するときの順番〜

みなさんと一緒にこれまで20個の助動詞を学んできました。

その中で、「〜にけり」「〜にし」と来たら完了+過去、「〜つらむ」「〜ぬらむ」と来たら強意+現在推量、みたいな助動詞が連続するパターンをいくつか紹介したと思います。

ここで次のような疑問を持った人がいるかもしれません。

「連続する助動詞の順番って、逆じゃダメなの?例えば「にけり」なら「けりぬ」とかになることはないの?」

いい質問です。

結論から言えば、逆ではダメです。

「にけり」が「けりぬ」になったり、「つらむ」が「らむつ」になったりはしないのです。

なぜでしょうか。ヒントは活用表にあります。

「けり」と「らむ」の活用表をもう一度見てみましょう。

もし「けりぬ」という順番がありうるなら、完了の助動詞「ぬ」は連用形接続なので、「けり」は連用形になっていなくてはダメです。

しかし、活用表はどうなっていますか?

そう、連用形のところは空欄、つまり連用形が存在しないのです。(もう一度上に戻って確認してみてください。)

「らむつ」という語順がありえないのも同じ理屈です。「つ」は完了の助動詞で、連用形接続ですが、上に来る「らむ」には連用形の形がありません。

このことから、何が言えるでしょうか。

活用表の未然・連用形が空欄の助動詞ほど、後ろに来やすい、ということです。

特に今あげた「けり」に加えて、「き」「けむ」といった過去系の助動詞は一番最後に置きます。

過去の助動詞には叙述を終わらせる力があり、文を終始させることができるのです。

よく物事を終わらせることを「けりを付ける」といいますが、それは「けり」の叙述を終わらせる力から来ているとも言われています。

あの活用表の空欄は、意外とちゃんとした意味があるのですね。

必須知識ではないものの、こういうところを知っているのといないのとで古典文法に対する印象が全然変わってきます。

よければ覚えておいてください^^

まとめ

まとめるほどでもないかもしれませんが、今日のまとめです。

・願望の助動詞「まほし」「たし」は「〜したい」と訳す

・「まほし」は未然形、「たし」は連用形に接続する

・助動詞が連続する場合、未然形、連用形などがない助動詞の方が後ろに来やすい

「まほし」「たし」は意味が一つしかないので、直接文法問題として出てくることはそこまでありません。しかし、文章中に出てくることはけっこうあるので、しっかり意味を覚えておく必要がある助動詞の一つです。

なんだか今日はあっという間に終わってしまいました。

「え、物足りない?」

安心してください。

次回は、再び推量の助動詞に戻ります。

いよいよ「2大推量」の残る一方を攻略します。

次回を楽しみにしていてくださいね^^

次はこちら→【助動詞最難関!】推量の「べし」を徹底説明します

 

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