古典文法講座

順接?逆接?接続助詞「を」「に」「が」の対処法を紹介します

前回は、接続助詞とは何か、そして頻出である「ば」の訳し分けについて扱いました。

【接続助詞】「ば」「とも」「ども」と接続の4条件

今日も引き続き接続助詞を勉強します。

今日は、応用編なので、ちょっと難しいですが、これを理解しておけば、文章を読み進めるのが一気に楽になるので、ぜひ続きを読んでみてください!

※書いていたらいつもより長くなりました・・あらかじめご了承ください。

<今日登場する接続助詞>

  • ものの
  • て、して
  • つつ
  • ながら

順接・逆説どちらにもなりうる助詞

前回は、順接なら「ば」、逆説なら「とも」「ども」などそれぞれで担当が決まっていました。

しかし、今日はじめに扱う助詞は、順接・逆説どちらの使い方もできてしまうという助詞たちです。うーむ、なんと厄介なことか。

どんな助詞があるかというと

  • ものの

がそれにあたります。

「どうせ、これが順接か逆接かは文脈判断っていうんでしょ?」

はい、さすが第3章まで来ただけのことはありますね。その通りです。

「うう、古文で面倒だなあ」と思うかもしれません。

しかし、例えば「が」を見てみると、実は現代の私たちも1語で順接と逆接を表してしまっています。

1、今日ははやく目が覚めてしまったのだが、それは今日が遠足だからだ。

2、今日ははやく目が覚めたのだが、そこから3度も寝てしまった。

1は確かに「が」を使っていますが、これは明らかに逆接の意味で使っていません。

英語に直したとして、butを使ったのではおそらく×されてしまうでしょう。

 

 助詞を境に主語が入れ替わる

この「を」「に」「が」といった接続助詞たちは、順接or逆接の文脈判断をさせるだけでは飽き足りず、ときどき主語を交代させて私たちをさらに混乱させてきます。

つまり、「が」「を」「に」などはその前後で、主語が入れ替わることがあるのです。そして、その後半の方は主語が省略されがちです。

まず順接なのか逆接なのかが分からない。そして、主語が消える・・

これが古文の読解を難しくさせている根本原因です。

「試験が近づいているので、(僕は)きちんと勉強する」とか「彼女はああ言ったけど、(僕は)彼のいうことが正しいと思う」というように現代語で考えれば、この主語の交代、そして省略というのは全く普通のことなのですが、これを古文でやられるとけっこうしんどいですね。

前回習った「ば」や「ども」も主語交代の接続助詞です。ただ、こちらは訳がしやすいので、比較的主語が変わったことに気が付きやすいといえます。

「が」「に」「を」の対処法

では、どうやって読み進めていけばいいのでしょうか。

ここでは2つの対処法を紹介します。

1、区切る

2、すべて「が」と訳す

どちらも有効な方法です。ダブルで使っても構いませんし、自分のやりやすそうな方を使ってみるのもOKです。

 方法1:区切る

まずは1の「区切る」から説明します。

これは古文の読解法という以前書いた記事でも少し触れていますが、接続助詞の「を」「に」「が」が出てきたら、文章にスラッシュを入れます。

参考:古文が読めない人向け、古文読解の秘訣【これを意識してください】

スラッシュの前までで、一度訳を考えてしまって、それから先へ進みます。

順接、逆接はいったん気にせず、それぞれの部分を先に理解してしまいます。

接続助詞の持っている意味は、文と文の関係(順接か逆接か)だけなので、無視しても各部分の内容をつかむことはできます。

そこから、「ああ、それなら順接だな」と決めていけばいいのです。

このメリットは、前後の読解に集中することで、結果的に文脈判断がやりやすくなる、というところにあります。

また、古文の文章は一文が非常に長いという特徴があるので、「を」「に」「が」で区切っていくと、ちょうどいい所で文が区切れて読みやすくなるというメリットもあります。

 方法2:すべて「が」と訳す

次に2の方法です。

こちらはいたってシンプル。

すべて出てきた接続助詞を(「を」でも「に」でも)関係なくぜんぶ「が」と訳してしまいます。

なぜこれが効果的なのでしょうか。

先ほど、一緒に確認したことを思い出してみてください。

私たちは普段「が」を順接、逆接どちらの場合に使っていると言いましたね。

これを使うわけです。

もう分かりましたね。つまり、「とりあえず「が」と訳しておけば、(実際のところ順接だろうが、逆接だろうが)意味としては通じる」ということです。

 実践

ちょっと長いですが次の文章を読んで、実際にどうやって使うのかを学びましょう。

(左大臣は)はたおりの鳴くを愛しておはしましける、暮れければ、「下格子に、人参れ。」と仰せられける、「蔵人五位違ひて、人も候はぬ。」と申して、この侍参りたる、「ただ、さらば、汝下ろせ。」と仰せられければ、参りたる、・・・

※意味・読み方

・はたおり→キリギリスのこと ・下格子→げこうし ・蔵人→くろうど

まずは方法1を使って訳をしてみましょう。「に」の部分で、区切っていきます。

現代語訳(方法1:「に」で区切る、を使用)

(左大臣は)キリギリス(=はたおり)が鳴くのを愛していらっしゃった

/日が暮れたので、「格子を降ろしにまいれ!」とおっしゃった

/「蔵人の五位は居合わせておらず、人がおりません。」と申し上げて、この侍が参上した

/「それならば、お前がおろしなさい。」とおっしゃったので、参上した/

見やすいように、スラッシュのところで改行しました。

どうでしょうが、若干ぎこちないものの、あえて接続詞を考えなくても、だいたい文意がつかめますね。

このようにして部分に区切って訳を把握していくというのが方法1です。

では、方法2でやってみます。

現代語訳(方法2:すべて「が」で訳す、を使用)

(左大臣は)キリギリス(=はたおり)が鳴くのを愛していらっしゃったのだが、

日が暮れたので、「格子を降ろしにまいれ!」とおっしゃったが、

「蔵人の五位は居合わせておらず、人がおりません。」と申し上げて、この侍が参上したのだが、

「それならば、お前がおろしなさい。」とおっしゃったので、参上したが、

こちらは、「に」のところを「が」に変え、そこで改行してあります。

すごく冗長な感じは否めないのだが笑、これでも意味は通じますね。

もしこの短調な感じがイヤだなという人は、「〜だがそんな時に」と「そんな時に」を適宜補ってあげるとけっこうにしっくりきます。

方法1、2のいずれにせよ、ポイントは「に」「を」「が」が出てくるたびにいちいち順接、逆接を判断しようとしない、ということです。

正確に読もうとする姿勢はとても素晴らしいのですが、古文ではそれよりも文章のリズムというのが大切です。

ぜひ試してみてください^^

その他の接続助詞

ここからは、その他、ぜひ覚えておきたい接続助詞を紹介します。

 単純接続「て」「して」

訳し方:〜して

最も簡単な接続助詞と言えるでしょう。ベルトコンベアのように文章の意味をそのまま次へと伝える役割を果たします。

僕らが普段使う、「朝起きて、歯を磨いて・・」の「て」と同じです。

「て」で覚えておきたいのが、「て」の前後では基本的に主語の入れ替わりがない、ということです。これも現代語で考えるとすぐに分かります。

「朝起きて、歯を磨いて・・」の主語は同じ「私」ですね。なので「て」や「して」では文を区切らずにどんどん進んでいきます。

 打消接続「で」

訳し方:〜ないで

打消の助動詞「ず」+単純接続の助詞「て」→「ずて」→「で」になったと言われています。

直前の語を打ち消しつつ、次の文へとつないでいくというなかなか器用な助詞です。

よく出てくるのが「〜にはあらで」という形。

この「に」は断定の「なり」で、「〜である」の訳を反映させて、「〜ではなくて、」という感じで現代語訳します。

「〜にはあらで」→「〜ではなくて」

ここでしっかりと覚えてしまいましょう。

 反復「つつ」

訳し方:〜しながら、〜し続けて

「つつ」と聞いてまず思い浮かぶのが、たとえば、「テレビを見つつ、問題を解く」のような「同時進行の作業」というイメージかもしれません。

もちろん、その意味もあるのですが、覚えておきたいのが「〜し続ける」という反復・継続のニュアンスを表現できるということです。

反復の例として次の和歌を考えてみましょう。

御垣守衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつものをこそ思へ

百人一首にも収録されている有名な和歌です。ざっと訳すとこのような感じです。

訳:御垣守の衛士(≒警備の人)がたく火は夜に燃えて、昼には消えてを繰り返す。その火のように、私の恋心も夜は燃えて、昼は思い悩んで消えるようになっているのだ。

あたりを照らすためのかがり火が灯ったり、消えたりを繰り返す様子に、自分の恋心を喩えているのですね。

まさに、この火がついたり消えたりの反復が「つつ」のイメージです。

 同時進行「ながら」

訳し方:〜ながら、〜けれども

もう一つ「同時進行」を表すことのできる接続助詞が「ながら」です。

これは「ながら運転」とか「ながら勉強」といった言葉でもおなじみなので説明不要でしょう。

とはいえ、もう一つ「ながら」には使い方があります。

例えば、「彼は小さいながらも力がある」のように「〜けれども」という逆接の意味で使うこともできます。

こちらもそこそこ出てきますので、しっかり頭に入れておきましょう。

まとめ

今日のまとめです

・「が」「を」「に」「ものの」は順接・逆接どちらの意味にもなる

・主語の前後で主語が変わることもしばしば

・対策としては、文を区切ってしまう、曖昧なままつなぐ、がある

「が」「を」「に」と前回の「ば」をうまく対処できるようになれば、古文の読解は本当に一気に楽になります。

そして先ほども言いましたが、古文はリズムが大事!

「適度な適当さ」というのが古文を読む際の基本スタンスです。

肩の力を抜いて、読み進めていきましょう^^

次はこちら→主格、同格・・格助詞「の」の用法を解説します!

 

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