前回は、副詞のような働きをする「副助詞」を紹介しました。
前の文を受けて、そこから類推や添加を行うための助詞でした。
→副助詞の「だに」「すら」「さへ」を紹介【文脈をイメージしよう】
さて、今日で助詞編は最終回。最後は「終助詞」というグループを扱います。
「終助詞」とは字の通り文の最後に置かれる助詞で、感覚としては助動詞に近いです。
そこで、この終助詞に関しては意味ごとに分けて解説していきます。
助詞のグループにはあと一つ「間投助詞」というものが存在しますが、そこまで取り上げるべきことがないので、本講座では割愛します。ご了承ください。
<今日、紹介する終助詞>
- な
- (な)〜そ
- ばや
- てしがな、にしがな
- なむ
- もがな
- な
- か、かな
- かし
禁止の終助詞
・な
訳し方:〜するな
・(な)〜そ
訳し方:〜してくれるな、〜しないでおくれ
まずは「〜してはいけない」という禁止の意味を表す終助詞をみていきましょう。
禁止の意味は助動詞でも表すことができました。覚えているでしょうか?
そうです、「まじ」というのがありましたね。
「な」というのは、現代語でも禁止の表現として「〜するな」といいますね。それと同じです。
一方「(な)〜そ」というのは、禁止の意味で使うのですが、やや丁寧な禁止の表現です。
訳す時は「〜してくれるな、〜しないでおくれ」といった感じでちょっとソフトめに訳をしていきます。
(な)というのは何なんだ?と思われたかもしれません。
これは、「(な)〜そ」とセットで使うことが多いことを示しています。※「そ」だけが単独で使われることもあります。
例文で確認しておきましょう。
な起こしたてまつりそ。
訳:起こし申し上げないでおくれ。
このように、「な〜そ」の部分に動詞を挟んで、その動詞を禁止の対象とします。
一つ目の終助詞「な」と「な〜そ」の「な」は全くの別物ですので気をつけましょう。「な〜そ」の「な」は副詞にあたります。
願望の終助詞
自分の願望
・ばや
訳し方:〜したい
・てしがな、にしがな
訳し方:〜したいなあ
「〜したい」という自分の願望を表す終助詞がこの「ばや」と「てしがな、にしがな」です。「ばや」と比べると「てしがな、にしがな」はやや詠嘆調というか、心の中で思う感じで使います。
見ばや(=見たい)、聞かばや(=聞きたい)、といったように「ばや」は未然形にくっつけて使います。
「願望」の意味は助動詞でも表すことができました。こちらも思い出しておきましょう。
願望の助動詞は「まほし」と「たし」、「まほし」が未然形接続で「たし」が連用形接続でしたね。
いかで+願望=「なんとかして〜したい」
願望の助詞とセットで「いかで」という言葉がよく出てきます。「いかで」は基本的には「どうして〜か」といった疑問(あるいは反語)の意味で使われるのですが、下に願望や意志を表す助詞、助動詞が来ると、「なんとかして〜」と訳す場合があります。
例えば、
いかでこのかぐや姫を得てしがな。
訳:なんとかしてこのかぐや姫を得たい(≒妻としたい)。
といった形です。
この「いかで+願望」は入試でもよく問われるところです。しっかり覚えておいてください。
他への願望
願望には「自分がそうしたい!」と思うことと、「相手に〜してほしい」とか「状況がこうなったらいいな」といった自分以外のものへの願望も存在しますね。
そういった「他への願望」を表すのが次の2つの終助詞です。
・なむ
訳し方:〜してほしい
・もがな
訳し方:〜があればいいなあ
「なむ」は未然形、「もがな」は主に体言に接続します。
人あらなむ(=人がいてほしい)
人に知られで来るよしもがな(=人に知られないで(あなたのもとに)来る方法があればいいなあ)
といった感じで出てきます。
「なむ」の識別
さて、「なむ」と言えばやはり識別のことを説明せずにはいられません。
文中で「なむ」の形で出てくるとき、どんなパターンが考えられるでしょうか。簡単な文で見ておきましょう。
◯次の「なむ」を文法的に説明しなさい。
1、花咲きなむ。
2、花なむ咲く。
3、花咲かなむ。
さて、それぞれの「なむ」の正体は何でしょうか。
みなさんも一緒に考えてみましょう。
<解説>
では順番に見ていきます。
1ですが、「なむ」の前は「咲き」という連用形の形になっています。ということは「なむ」は連用形接続のものである、と考えることができます。しかし、連用形接続の「なむ」など存在しません。
では一体この正体は何なのでしょうか。
ポイントは、「なむ」を「な」と「む」に分けるということです。
すると連用形接続なのは「なむ」ではなく「な」一文字であるということに気づきます。
もう分かりましたね。
この「な」とは終止形にすれば「ぬ」のこと。つまり、完了の助動詞「ぬ」です。
とはいえ、後ろに「む」が来ています。これは推量の助動詞なので、推量の前の「ぬ」は強意。
よって1は強意「ぬ」+推量「む」が答えとなります。
次は2ですが、これは簡単です。「なむ」を外しても「花(が)咲く」と意味が通じるので、これは係助詞の「なむ」です。
さて最後です。「咲か」と未然形になっているので、これが先ほど学んだ終助詞の「なむ」です。
現代語訳と合わせて、まとめておきましょう。
<「なむ」の識別>
1、「なむ」の上が連用形→強意の助動詞「ぬ」+推量の助動詞「む」
例文:花咲きなむ
訳:花がきっと咲くだろう
2、「なむ」を取っても意味が通るor文末が連体形→係助詞「なむ」
例文:花なむ咲く
訳:花が咲く
3、「なむ」の上が未然形→終助詞「なむ」
例文:花咲かなむ
訳:花が咲いてほしい
未然形・連用形の形が同じものなどは上の方法が使えず、文脈判断になってしまいますが、覚えておくと非常に便利です。ぜひチェックしておいてください。
詠嘆
・な
・か、かな
訳し方:〜なあ
ここは特に注意点もありません。
そんなものがあるんだなあ、くらいに流していただいてOKです。
念押し
・かし
訳:〜よ
これもそれといって特筆すべき点はありません。
「〜ぞかし」という形で出てくることが多いです。
まとめ
本日のまとめです。
・終助詞は助動詞と同じような感じで使われる
・願望の終助詞は多数種類あり、ぜひ覚えておきたい
・文中に出てくる「なむ」は「な」と「む」で構成されているパターンもある
さて、助詞編はいかがだったでしょうか。
接続助詞「ば」や格助詞「の」、副助詞「だに」「すら」「さへ」や、そして今日学んだ「なむ」など、意外とその重要性に気づいていただけたのではないかと思います。
助動詞の影に隠れがちですが、古文の読解を深めるためには、助詞の知識が必要不可欠です。
そして、知識は使うことによって自分のものになります。
ぜひ、学校や塾の宿題、授業や模試などで、この古典文法講座で出てきた助詞がないかどうか意識しながら古文を読み進めていきましょう!
それではまた、次の章でお会いしましょう^^
◯助詞編のはじめはこちら
→【新章突入!】古典文法の助詞をシリーズで徹底解説していきます
◯助動詞編のはじめはこちら
◯用言編のはじめはこちら
→動詞の活用をわかりやすく説明【古典文法の復習はここからスタート】