これまで、古文の勉強法についていろいろと扱ってきました。
今日からは、しばらく古典文法を説明する記事を書いていこうと思います。
古典文法はとにかく暗記をしなければなりません。みなさんも、「ら、り、り、る、れ、れ」とか「こ、き、く、くる、くれ、こ、こよ」といった呪文を学校で何度も唱えていますよね。
この練習はもちろん大切なんですが、理屈を理解することで、記憶に残りやすくなります。
今日からの記事では、かつて元高校国語の先生である筆者が、理屈をしっかりと理解できるように説明していきます。
このブログを読めば、古典文法の参考書を買う必要なし!というレベルで記事を仕上げますので、ぜひ活用してください^^
受験で使う古典文法の全体像
まずは、勉強すべき文法にどんなものがあるかを確認しておきましょう。
- 用言(動詞、形容詞、形容動詞)
- 助動詞
- 助詞
- 副詞
- 敬語
- 和歌の修辞法
全部でこれだけです。
項目は6つ。しかも「副詞」は古文単語でやってしまう場合が多いので、実質5項目だけです。
ちなみに英文法だとどれだけあるかというと・・
- 文の種類
- 基本5文型
- 時制(現在、過去、未来、完了)
- 不定詞
- 動名詞
- 分詞
- 関係詞
- 仮定法
- 名詞
- 形容詞
・・・と続きます。
古典文法はややこしいイメージがありますが、覚えることはそれほど多くなく、高3からでも十分間に合います!
まずは用言を確実に
今日は、まず「用言」を攻略しましょう。
用言とは、動詞、形容詞、形容動詞のことを指します。
動詞、形容詞、形容動詞は文の述語(「〜だ」の部分)になるので、文の内容を把握する基本となります。だからこそ、古典文法では最初に学ぶことになっています。
それぞれを説明する前に、まず「活用」についておさらいをしておきます。
活用とは、語尾が変わること
単語の中には、後ろにくる言葉によって語尾が変化するものがあります。
この語尾の変化のことを「活用」といいます。
動詞、形容詞、形容動詞はいずれも活用します。
うしろに続く言葉は次のパターンがあります。
- 「〜ない」・・未完了を表す→未然形
- 「〜て」・・あとに用言が続く→連用形
- 「〜とき」・・あとに体言(名詞)が続く→連体形
- 「〜ども」・・あとに逆説が続く→已然形
今、後ろにくる言葉と言いましたが、後ろに言葉がこない場合もありますね。文末である場合がそれです。
5、6、後ろに何もこない→終止形・命令形
これらを順番に並べると
◯活用形
1、未然形(〜ナイ)
2、連用形(〜テ)
3、終止形(〜。)
4、連体形(〜トキ)
5、已然形(〜ドモ)
6、命令形(〜!)
になります。(順番は必ずこの通りじゃないとダメです。なんでこの順番なのか、と言われると困りますが・・)
これら「未然形」や「連用形」、「終止形」などのことを「活用形」と言います。
なので、学校で先生から「この動詞の活用形は?」と当てられたら、上の6つの中から答える、という訳です。
活用には種類がある
なぜ用言の活用(語尾変化)を未然形〜命令形までの活用形に分類したのでしょうか。
それはこの6つに活用形を分けることで、動詞、形容詞、形容動詞の語尾変化のパターンを網羅できるからです。
今、僕は「語尾変化のパターン」と言いました。
そうです。単語を未然形〜命令形まで活用させていくと、そこに決まったパターンがあることに気づきます。
ちょっと一緒にやってみましょうか。
「言ふ」と「取る」という動詞を未然形から順番に活用させてみましょう。(昔の仮名遣いなので「言う」→「言ふ」となっています。)
「言ふ」のあとに「〜ない」を付けてみると「言ふ」+「ない」で「言はない」となります。
では同じようにして、連用形〜命令形までを変化させてみましょう。また、「取る」も未然形〜命令形までを活用させてみましょう。
OKでしょうか。こんな感じになります。
さて、これをみて何か気づくことはないでしょうか?
この二つの言葉、変化の仕方が似ていませんか?
すべてローマ字にしてみるとはっきり分かります。
そう、どちらも未然形から命令形にかけて「あ、い、う、う、え、え」という母音の変化をしています。
このように、動詞(形容詞、形容動詞も)には、それぞれ活用のパターンが決まっています。
この活用のパターンのことを「活用の種類」といいます。
今の「言ふ」「取る」は「四段活用」という活用の種類に分類されます。ア段の音〜エ段の音まで合計4つの段を用いていることから「四段活用」と言うわけです。
この四段活用と合わせて、動詞には基本的な活用の種類が5つ存在します。
◯活用の種類
・四段活用
・上一段活用
・上二段活用
・下一段活用
・下二段活用
それぞれ見ていきましょう。
四段活用
変化の仕方:あ、い、う、う、え、え
特徴:「給ふ」「会ふ」「知る」「食ふ」など四段活用の動詞は多く、未然形がア段の音になります。
上一段活用
変化の仕方:い、い、いる、いる、いれ、いよ
特徴:「着る」「射る」など比較的少ないので、「ひいきにみゐる」という覚え方をするのが一般的です。すべてイ段の音(真ん中ウ段の一段上)を用いるため上一段活用と呼ばれます。
「ひいきにみゐる」の使い方
それぞれの文字のあとに「る」を付けます。
ひ+る=ひる(干る)、い+る=いる(射る)、き+る=きる(着る)、に+る=にる(煮る)、み+る=(見る)、ゐ+る=ゐる(居る)といった感じ。
上二段活用
変化の仕方:い、い、う、うる、うれ、いよ
特徴:「起く(=起きる)」「恥づ(=恥じる)」など現代語と少し形が違うものが多く、未然形がイ段の音になります。真ん中のウ段とその一段上のイ段、合わせて2段を用いるため、「上二段活用」と言います。
下一段活用
変化の仕方:え、え、える、える、えれ、えよ
特徴:大学入試で出るのは「蹴る」の一語のみです。だから「け、け、ける、ける、けれ、けよ」と覚えてしまってもOK。真ん中のウ段の一つ下のエ段だけを使うので、下一段といいます。(実質「蹴る」しかないので、ほぼ出ないし、覚える必要ないのでは・・)
下二段活用
変化の仕方:え、え、う、うる、うれ、えよ
特徴:「得(=得る。「う」と読む)」、「寝(=寝る。「ぬ」と読む)」、「経(=経る。「ふ」と読む)」など、一文字の動詞がけっこうあります。下二段活用の動詞は多く、未然形がエ段になります。
下二段という理由は・・もうお分かりですね。
以上が、動詞の基本的な活用の種類です。(なぜ僕が、何度も「基本的な」と言っているかは次の記事で分かります。)
まとめ
・古典文法は英文法と比べると覚えることが少なく、シンプルだぞ
・語尾の変化を活用といい、未然形〜命令形まで6つの活用形があるぞ
・動詞には5種類の基本となる「活用の種類」があるぞ
まずは、「活用形」と「活用の種類」という用語をしっかり区別できるようにしましょう。
長くなったので、動詞については続編を作成します。そちらをご覧ください。
◯次はこちら
→【古典文法】動詞の活用の種類を識別するための簡単2ステップ