古典文法講座

【尊敬・謙譲・丁寧】敬語の種類を紹介します!

浪越考
浪越考
前回は、敬語の導入として、「敬語にするにはどうするのか」ということを考えたね。→敬語の基本と本動詞と補助動詞を紹介

在川葵
在川葵
「言う」→「おっしゃる」みたいに、動詞自体を変えてしまうか、「思う」→「お思いになる」って感じで、敬意の表現を付け足すんだったよね。
浪越考
浪越考
そうだね。

今日は、具体的な敬語の種類について考えてみよう。

在川葵
在川葵
あ、ひょっとして尊敬語とか謙譲語とかでしょ!

覚えてるよ。

確か、尊敬語が相手を上に上げる使い方で、謙譲語が自分を下げて敬意を表す、だよね。

浪越考
浪越考
へー、すごいね。
在川葵
在川葵
でしょ!

ここはなんかよく覚えてるんだ〜

浪越考
浪越考
ただ、それは現代文法の考え方で、古典文法になるとちょっと違う考え方をした方がいいんだ。
在川葵
在川葵
え、そうなんですか?
浪越考
浪越考
うん。

今日は、古文での尊敬語と謙譲語の考え方を紹介するから、しっかりついてきてね。

尊敬語=動作の主体への敬意

浪越考
浪越考
さて、それでは早速例文で考えてみようか。

 

  • 先生が映画をご覧になる。
  • 社長は7時にお越しになります。
  • 校長先生が入学式でお話なさる。
浪越考
浪越考
ここに出てきている敬語はある共通点を持っているんだけど、何だか分かるかな?
在川葵
在川葵
えーと、全部尊敬語ってこと?
浪越考
浪越考
まあ、そういうことなんだけど・・

全部、「主語に対する敬意」を表しているよね?

  • ご覧になる→先生
  • お越しになる→社長
  • お話しなさる→校長先生
在川葵
在川葵
あ、ほんとだ!
浪越考
浪越考
このように動作の主体(=主語)に対して用いる敬語を尊敬語と定義するよ。
在川葵
在川葵
相手を上に上げるとかじゃなくて、「動作の主語への敬意」が尊敬語ってこと?
浪越考
浪越考
その通り。

尊敬語・・・動作の主体への敬意を表す

◯主な尊敬語

  • 給ふ(たまふ)・・お与えになる(本)/〜なさる(補)
  • おぼす・・お思いになる
  • ご覧ず・・ご覧になる
  • 召す・・お呼びになる、(服などを)お召しになる

謙譲語=動作の客体(受け手)への敬意

在川葵
在川葵
じゃあ、謙譲語は誰への敬意を表すことになるの?
浪越考
浪越考
鋭い人はもう気づいたかもしれないけど、尊敬語が主語に対する敬意なら、謙譲語はその動作を受ける側の人へ向けた敬意表現なんだ。

謙譲語の例を見てみよう。

  • 5時に先生のもとへ参ります
  • 失礼ながら申し上げますが・・
  • ご用件を承りました
浪越考
浪越考
どれも動作を受ける相手の方に敬意を払っているね。

3番目の「承りました」はちょっと難しいけど、相手からしたら「了解された」ということだから動作の受け手と考えることができるよ。

在川葵
在川葵
なるほど、謙譲語はえらい人が動作を受ける時に使うんだ。
浪越考
浪越考
尊敬→主体への敬意、謙譲→客体への敬意と覚えておけばOKだね。

謙譲語・・・動作の客体への敬意を表す

◯主な謙譲語

  • 奉る(たてまつる)・・差し上げる(本)/〜し申し上げる(補)
  • 参る・・参上する
  • まかる・・退出する

丁寧語=聞き手、読み手への敬意

浪越考
浪越考
さて、これまでに尊敬語と謙譲語を考えたけど、このあともう一つ、違ったタイプの敬語を紹介するよ。

それが丁寧語だ。

在川葵
在川葵
丁寧語、聞いたことはあるよ。
浪越考
浪越考
うん、現代語でも「ですます調」と言うけど、古文でもこれに当たる表現があるんだ。

例えば、学校の先生で説明する時「〜です」「〜ます」とですます調で授業をする先生がいるよね?

在川葵
在川葵
うん。
浪越考
浪越考
このように丁寧語は「聞いている人あるいは文章の読者」に向けて敬意を表すときに用いるよ。

昔話とかも丁寧語で書かれているね。

在川葵
在川葵
ああ、確かに
浪越考
浪越考
訳し方は「ございます」や「〜です」といったものしかないから、尊敬語や謙譲語と比べたら簡単だよ。

とりあえずは、「侍り(はべり)」と「候ふ(さふらふ)」の2つを覚えておけばOKだ。

在川葵
在川葵
はーい

丁寧語・・・聞き手or読み手への敬意を表す

◯主な丁寧語

  • 侍り(はべり) ございます(本)/〜です(補)
  • 候ふ(さふらふ) ございます(本)/〜です(補)

「侍り」「候ふ」は「お仕えする」という意味で使うときは、謙譲語になります。

謙譲語の「侍り」「候ふ」には補助動詞の使い方がないので、補助動詞でこの二つが出てきたら、丁寧語だと分かります。

本動詞、補助動詞の判別法はこちらの記事を参考!→敬語の基本と本動詞と補助動詞を紹介

練習問題

じゃあ、実際に練習してみよう。

◯次の下線部の敬語について、1)敬語の種類と、2)誰に対する敬意かを答えなさい。

  1.  聖、喜びて、日ごろのおぼつかなさなどのたまふ
  2.  普賢菩薩、象に乗りて見えたまふ
  3.  (男が言った、)「嫗ども・・・寺に尊き業すなる、見せたてまつらむ。」
  4.  二年が間、世の中飢渇(けかつ)して、あさましきこと侍りき。

 

◯現代語訳

  1.  聖は、喜んで、ここ数日のじれったさなどをおっしゃる
  2.  普賢菩薩が、象にのって姿を見せなさった
  3.  (男が言った、)「お婆さんよ、寺で尊い行いをするらしいが、それをお見せ申しあげよう。」
  4.  2年間、世の中が飢饉に苦しみ、おどろきあきれることがございました

<解説>

浪越考
浪越考
さて、現代語訳も参考にしながら考えてみよう。
在川葵
在川葵
1の「のたまふ」は尊敬語だったよね。で、確か尊敬語は主語への敬意だから、ここでは「聖」に対する敬意になるってこと?
浪越考
浪越考
そうそう!OKだね。2の「たまふ」も尊敬語だから、主語の「普賢菩薩」が敬意の対象になるね。

ところで、この「たまふ」は本動詞、補助動詞どっちだろう?前回の方法を思い出してみて。

在川葵
在川葵
えーと、確か、、

前に動詞があれば補助動詞だったっけ。だから、この「たまふ」は補助動詞かな?

浪越考
浪越考
その通り!やるね、在川さん。

補助動詞には敬意表現しかないから動詞とセットで使わないといけないんだったね。

在川葵
在川葵
えへへ
浪越考
浪越考
じゃ、3だけど。「たてまつる」は謙譲語だから、見せられる人が敬意の対象だよ。だから、ここでは嫗に対する敬意だね。
在川葵
在川葵
前に「見せ」と動詞がきているから、この「たてまつる」は補助動詞ね。
浪越考
浪越考
いいね。最後は?
在川葵
在川葵
「はべり」ってさっきやった丁寧語だ。ということは、聞き手、読者に対する敬意でいいの?
浪越考
浪越考
そうだよ。この「はべり」は特定の登場人物に向けられたものではなく、この文章を読んでいる人に向けた敬意なんだ。

数百年の時を隔てて、今の僕たちに向けて敬語が使われているってなんかすごいよね。

◯解答

  1.  尊敬語・本動詞、聖への敬意
  2.  尊敬語・補助動詞、普賢菩薩への敬意
  3.  謙譲語・補助動詞、嫗への敬意
  4.  丁寧語・本動詞、読者への敬意

まとめ

・尊敬語は動作の主体に対する敬意を表現する

・謙譲語は動作の客体に対する敬意を表現する

・丁寧語は話の聞き手、読み手に対する敬意を表現する

浪越考
浪越考
前回やった、本動詞・補助動詞の区別はこの種類とは別カテゴリーだから注意しよう。

つまり、敬語には、尊敬・謙譲・丁寧の区別と本動詞・補助動詞の区別がそれぞれあるんだね。

ということは、全部でパターンは何通り?

在川葵
在川葵
う、いきなりの数学。

数学はもっと苦手なのに・・

答え:6通り

浪越考
浪越考
さて、次回は、具体的に文法問題として敬語がどのように出題されるか、そしてそれをどう答えるかを紹介して行くよ。
在川葵
在川葵
はーい。

おつかれさまでしたー!

次はこちら→【誰から誰へ?】敬意の方向を解説します

 

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