古典文法講座

主格、同格・・格助詞「の」の用法を解説します!

第3章「助詞」編の4回目。今日から格助詞というグループを学んでいきます。

前回までの接続助詞は、文同士の論理を作るものでした。

順接?逆接?接続助詞「を」「に」「が」の対処法を紹介します

それに対して、格助詞は文の中での「誰が、何を」といった対象を決めていくものです。

今日は、格助詞の「の」の働きについて解説していきます。

では、頑張っていきましょう!

格助詞「の」

格助詞の「の」には全部で5つの使い方があります。

<格助詞「の」の用法>

  1.  主格(〜が)
  2.  連体修飾格(〜の)
  3.  同格(〜で)
  4.  体言の代用(〜のもの)
  5.  比喩(〜のように)

この「の」の識別は、センター(共通テスト)など入試の頻出事項です。加えて、文章の読解においても重要な点なので、しっかり覚えていきましょう。

1、主格

訳し方:〜が

まず一つ目は「〜が」と訳して、文の主語を作ります。

現代語では、主語には「〜が」か「〜は」をつけるのが一般的ですが、古文では「〜の」と来ると主語になることが多いです。

※もちろん、「が」「は」で主語になることもあります。

2、連体修飾格

訳し方:〜の

「連体修飾格」と聞くと、すごく難しい使い方に感じますが、僕らが最も一般的に使っている「の」のことです。

「連体修飾」というのは要するに「体言を修飾する」ということです。

体言というのは、とりあえず名詞のことだと思っていただいて大丈夫です。

つまり、連帯修飾とは「名詞を修飾する」ということなのです。

では、僕らが普段使っている「の」とはどんなものでしょうか。

・彼の家

・国語の教科書

・青色のペン

・人生の意味 などなど

「の」後ろにはすべて名詞が来ていますね。

家、教科書・・といった後ろの名詞を説明するための「の」が「連帯修飾格」というやつです。

そう言われると、ああそれなら簡単、となりますよね。

古文にも、もちろんこういった「の」の使い方がありますよ、というお話しです。

3、同格

訳し方:〜で

これはかなり重要です。

みなさん、「同格」と聞いて英語にもそんな用語が出てきたな、と思いませんでしたか?

英語に同格のthatという文法事項がありますね。

それとよく似ています。

ちょっと説明が難しいので、こちらは例文で確認してみましょう。

『大和物語』という作品の「姨捨」というお話の一文です。

(男は)高き山、下り来べくもあらぬに置きて逃げて来ぬ。

今、「山の峰の」と「の」が連続して出てきていますね。

「山の」の「の」は普通に「〜の」と訳すので、連体修飾格でOKなのですが、問題は「峰の」の「の」です。(「の」が出てきすぎてややこしい・・)

実は、「の」の前の部分、「高き山の峰」と、後ろの部分「下り来べくもあらぬ(=下りて来ることができない)」というのが同じものを指しているのです。

つまり、

高き山の峰=下りて来ることができない

となっていて、それを「の」がつないでいるわけです。

このような前=後ろの時、それをつなぐ「の」は同格の用法になります。

イメージとしては、前で簡単に名詞を出しておいて、それを「の」以降で丁寧に説明してある、といった感じです。

そうです、まさに「同格のthat」の使い方と同じなのです。

 訳し方

さて、どう訳すかなのですが、

「〜で」と「で」を使って同格であることを示すというのが一般的な訳し方です。

先ほどの例文を訳すなら、

訳:高い山の峰で、下りて来ることができない峰に(年老いた母を)置いて逃げてきた。

となります。

「で」と訳す、ということに加えて、実はもう一つ現代語訳に直す際のポイントがあります。

それが、最後にもう一度、「下りて来ることができない峰」と「峰」を入れて訳している点です。

このように訳すことで、より分かりやすくなるだけでなく、採点者に「ここが同格だということに私は気づいていますよ」とメッセージを出すことができます。

だから、例えば他の例として

女の、髪の長きが・・

という文があったら

訳:女髪の長い女が

という感じで、きちんと最後の部分に名詞を補うようにします。

学校の教科書には、同格の「の」が使われる文章が入っているので、予習や授業のときに、しっかり自分で訳をしてみてください。

練習あるのみです!

 同格の見分け方

同格の訳し方はわかったけど、実際の文章でどうやって同格の「の」だと判断すればいいの?

と疑問に思うかもしれませんね。

先ほども説明したように、

・「の」の前と後ろが同じものを指しているのであれば同格

という見分け方ができますが、もう一つポイントを紹介しておきます。

それは

・同格の後半部分の最後に名詞が抜けている

です。

どういうことかというと、さっきの2つの例文をもう一度みてみましょう。

(男は)高き山の峰の、下り来べくもあらぬ◯に置きて逃げて来ぬ。

女の、髪の長き◯が

今、◯を入れたところに「峰」とか「女」といった同格の名詞が入るのですが、その前に注目です。

実は、「あらぬ」も「長き」も連体形になっています。

つまり、「後ろに名詞がきますよ」という目印なのです。

この「名詞のスペース」があるかどうかも同格「の」を判断する重要な手掛かりです。

今の時点ではよく分からないかもしれませんが、慣れていけば感覚的にわかってくるはずです。

4、体言の代用

訳し方:〜のもの

さて、同格でだいぶ文量を割いてしまったので、あとはさっと進めていきましょう。

これは現代語で考えれば簡単です。

「返せよ、僕のだぞ!」

の「の」がまさにこれです。

「の」しか言ってませんが、そのには「〜のもの」という意味が含まれていますね。

5、比喩

訳し方:〜のように

これは文法事項というよりも、単語として覚えてしまいましょう。

覚えて欲しいのは

「例の」です。

例の=いつものように

です。

確かに「〜ように」という訳になっていますね。

だいたい「例の」で出てくるので、とりあえずこの一語を覚えておけば大丈夫でしょう。

注意:「が」も「の」と同じ働きをもつ

格助詞の「が」という助詞も、今日紹介した「の」と同じ働きをすることができます。(接続助詞の「が」とは違います。助詞の「が」は2種類あるので注意。)

ただ、入試で聞かれるのは圧倒的に「の」なので、余裕があれば頭の片隅に留めておいてください。ちなみに、「が」には5番目の「比喩」の用法はありません。

まとめ

今日のまとめです

・格助詞「の」は主格、連体修飾格など全部で5つの使い方ができる

・そのうち同格は「〜で〜なもの」と訳し、「の」前後が同じでものあることを示す

・比喩の用法は「例の=いつものように」という1単語を覚える

はっきり言えず申し訳ないのですが、同格「の」は本当に慣れてくると感覚で「あ、これ同格っぽい」と分かります。

古文が読める読めないって、やはりこの慣れの部分が大きいなと思います。

だから今は苦手だな、という人でも、読んでいくうちに気づいたら読めるようになっていた、ということもあります。

日進月歩。日々の古文と触れ合う時間の蓄積が大きな成果につながりますよ!

次回はこちら→【接続助詞との違いは?】格助詞「を」「に」+その他を紹介します

 

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